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2012年11月 5日 (月)

万里の長城 遭難事故に関して

本日、朝にフジテレビから連絡があり、万里の長城で遭難があり、3名の方が亡くなられたこと(その時点では、2名死亡、1名行方不明)を知りました。それが、昔私が請負で勤めておりましたアミューズトラベルの企画と知って、しばし呆然としていました。

今回、亡くなられた3名の方には、心よりご冥福をお祈りします。
3年前、このような悲惨な遭難事故は、二度と起こしたくなく、元アミューズトラベルのガイドとして、シンポジウムなどで内部告発的に真実を訴えたのですが、それが解決しないうちに、また、今度は海外で同じような山岳気象遭難事故が起こってしまいました。なんとも、当時、私が訴えていたことが、活かされていないばかりか、何の教訓にもなっていなかったことに、自分の力の無さが悔やまれます。と同時に、アミューズトラベルに関して呆れ、怒りの気持ちもこみ上げてきます。
なぜ・・なぜ、このような事故が続くのでしょうか?

アミューズトラベルは、私が勤めていました6年ほど前で創業15年を迎える、比較的若い会社です。当時のことは・・純粋に、登山から旅行会社に入った私の中では「登山ツアーというのは非常に危ない形態の登山」というイメージがあったので、旅行から登山に入ったアミューズの仕事をするにあたり、会社相手に、安全面に関して、たくさんの苦言をしたことを覚えています。結局、そのことで、会社にとって、私はマイナス因子になり、クビになったわけですが・・今では、クビになったことを感謝しています。なぜなら、そのことがあったから、私は、純粋な登山者の一人として本当に安全な登山というものを考えることになり、仕事としても成功し、現在があるのですから・・

トムラウシ遭難の後、このことを教訓に危険意識が徹底されている、安全面に関しては十分な配慮がなされている・・とも思っていたのですが、、、

トムラウシと全く同じ形での、今回の万里の長城の遭難・・悲しくて悔しくて・・いたたまれない気持ちです。

いったい、いつになったらこのような悲惨な遭難事故が無くなるのか?

ツアー会社が、今回の事故に関しても、もし「気象が悪くなったので、仕方のないこと、運が悪かった」などと考えているなら、いつまでたっても遭難事故は無くならないでしょう。アミューズトラベルだけではなく、他の旅行会社も肝に命じて、もう一度、襟を正していただきたいものです。

登山は旅行ではありません。
自然を相手にした、命がけのスポーツです。
その世界は素晴らしく、私達を迎えてくれると共に、大自然の懐の中は決して暖かいことばかりでは無いということを忘れてはなりません。
意識の低い者、体力の無いものに関しては、容赦なく牙をむき、その命をいとも簡単に奪います。

安全面に関して、取りすぎるということはありません。
ただ、登山は立ち向かう勇気と撤退する勇気が必要です。
行けたのにも関わらず、行かなかったり、行けなかったのに無理して行ったり・・それは、一般の登山においてはリーダーがパーティ全体の意思を代表して決めることですが、登山ツアーの場合は、その主催の旅行会社、またはそれを請け負ったガイドにその判断が一任されます。そんな中で、ガイドの判断を鈍らせるものが、いわゆる「商業主義」っていうやつです。ここで引き返せば、お金が入らない・・とか、会社に損失を与えてしまえば、次回から仕事が回ってこない・・とか・・お客さん(パーティ全体)の安全面とは、かき離れた「商売だから沸き起こる危険な意識」が起こってきます。それは、旅行会社だけではなく私たちガイドそのものにも共通して言えることですが、その各々のガイドがどのような意識で、危機意識を持って、安全面に考慮して山行を遂行するか・・ということに尽きるのではないでしょうか?

要は、ガイド一人づつ、それが違っていて、そこに来る人(今の場合はお客さん)はその資質をそのガイドまたはその旅行会社が、どのように持っているかどうかを判断しなければならないと思います。ガイドは自分はパーティ全体の命を預かっている・・ということも肝に命じておかなければなりません。

各ガイドさんへ・・そんな、仕事を皆さんはされているのですよ!わかったはりますか?決して、「好き」でできる簡単な仕事ではないんですよ。

私、山形もまだまだ半人前ではありますが、お客さんへの意識に関しては、仕事とは離れた意識で接したいと、常々思っております。
ガイドは「個人ガイドだけでは・・生活ができない」という、いわゆる登山業界の常識にも似たことを、根本から覆そうとしている訳です。
実際、現在はそれのみで、生活ができております。
旅行会社に半分くらいは委託する方が楽に決まっています。でも、私はその方向には背を向いてきました。その私の理念をこれからも通していくべく、少人数で安全面を最大に考慮した素晴らしい山行作りに日夜時間をさいていきます。現在、私を支えていただいている「やまや」の皆様には本当に心より感謝します。ありがとうございます。

登山ツアーを企画している旅行会社の皆さん!
「明日は我が身」かもしれません。
是非、これを機会にもう一度、御社の安全面に対する意識を整理してみてはいかがでしょうか?今、これでいい、と思っていることは、「もっと、最適な方法があるのではないか」と常に自問自答して、甘える自分(会社)と戦っていくことです。
それが、できなければ即刻登山ツアーからは身を引くべきだと思います。

人生は登山と同じです。
手を抜けば、直ちにそのリバウンドはやってきます。
どうか、素晴らしい登山を心がけ、しっかりと大地の上に根を張って行きましょう。
必ずきれいな花が咲くことでしょうね。

いつもお客さんの前でお話しすることですが・・
登山に行く方の家族は、決して「必ず登頂して帰ってきてください」とは言いません。「必ず、無事で帰ってきてください」と言うのですから・・

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コラム」カテゴリの記事

コメント

Bさん
コメントありがとうございます。山を始められて2年ということですが、しっかりした意識をお持ちですね。
誰でも初めは、連れて行ってもらう、というところから登山に入ると思います。でも、初めはそうでも、そのうち自分の力で行きたくなり、また計画したり、その計画を遂行することに、山登りの喜びを感じるものです。

自分で行くためには、そのスキルも身に付けなければ行けませんし、当然、リスクマネジメントに対する知識や経験も必要で、それが感覚的に完全に身につくには、そこそこの長い年月の経験を要します。その途中過程を全てガイドや旅行会社に任せ、自分はただガイドの後を地図も見ずについて行けばいい・・というのが、登山ツアーというものです。旅行会社などは、人を集めなければ仕事になりませんので、一人一人にそういったことを教えられるはずもなく、安全面に対し欠落していることは、明らかです。ですから、安全面に欠落する山行をすること=多くの人数を集める。パーティとして信頼関係を持てない一元さんの関係=旅行会社のそれ。のような旅行会社のツアー登山は、基本的に「危ないモノ」になるのです。

原発事故の時にも思いましたが、日本人というのは、いかに危機管理意識に乏しい民族なのか・・
と思ったりもします。

登山ツアーに来られる方の多くは真の登山者ではなく、ただ一般観光旅行と同じ種類の・・例えば、京都のお寺を巡るツアーに参加する方と、ほぼ同じノリで来られます。確かに自分の足で歩くし、それなりに感動も得られるのですが、それは決して「自分で登った」ということにはならないのです。その代表的なのが、日本百名山を登頂しようという商品?であり、以前のコラムでも書かせていただいたように、それを、「集める」という、ただそれだけの意識で登っておられている方が非常に多いのです。

ですから、いくら、百名山、二百名山登ったからと言っても、自分では山に登れない方がたくさんおられます。私のコラムの「百名山の意義」や「山仲間募集!初めてこのブログに訪れた方へ」の中の「やまや」の説明・コンセプトのチラシの中で触れましたように、単に「数集め」のために登っておられる方が非常に多く見受けられます。ここに「山に登れても山を知らない方」または「山を知らなくても山に登れてしまう方」が発生します。実はこういう方が一番危なく、自分は「登れている」ものですから、「山を知っている」と勘違いされているのです。いくら登れていても、そのスキルやリスクマネジメントを身に付けなくては、危なくて山になど近づけません。そのことが分からずに、もし山に入り、何らかのリスクに遭遇した場合は、そのときに初めて、自分は「何も知らなかった」ということに気付かされるのです。「やまや」はこういった方でも、その意義を正し、ご自身で山に登れるようにご指導させていただいております。

山に入るためには、少なくともそのことをしっかりと意識した上で、いろんな知識や技術を身に付け、経験して、一つずつの山行を大切に思い出深いものにしたいものです。「やまや」では一人ずつにその意識を持っていただき・・・そう言っても、かたくはならず、朗らかなムードで・・・山登りを続けています。

山はただ登ればいい、というものではありません。
そこに至る過程で、いかに自分が感動できたか、何を感じられたか、経験できたか、苦労の結果楽しめたか・・そういうことこそが、登山の持っている意味ではないでしょうか?人生と同じです。

同じ山登りに、同じ時間を割き、費用を投じて行くのにも、やはり、そういう「感動できる充実した価値のある山登り」に行きたいですね。「あなたは人生を、山を、本当に楽しんでおられていますか?」人生は有限です。その間に多くの感動をしようではありませんか!

コラム、勉強になりました。
今回の事故は大変考えさせられるものでした。
私は山に登り始めてまだ2年で、山の厳しさやそこに行く責任の重さについてまだまだ理解していないと思います。
実際始めたのは父に誘われたことがきっかけで、始めは連れて行ってもらっているとという認識が強く、地図も見ないし、コースも把握していない、服装や持ち物も言われたものを持っていくだけ、でした。
そのうちに友達や1人でも行くようになり、ちょっとした道迷いや寒さも経験し、これじゃあかんと地図読みやルート作成、装備など本読んだりして勉強中です。
でも、父につれてってもらっているばかりでは、ずっとアカンということに気づかず、全て父任せで何かあったら父のせいにしていたと思います。
登山ツアーのお客さんのなかには、(今回に限らず)私のような認識の方もいらっしゃるのかなと思います。勿論そうではない方もいらっしゃると思いますが。
山に対する責任感が生まれない環境下でずっときているという場合もあるのかなと思います。

コメントで、旅行会社は何も教えてくれないし、客も知りたがらないとありますが、知らなきゃだめなんだよって思うし教えなきゃだめなんじゃないの?って思います。それが連れて行く側、連れて行ってもらう側双方の責任だと思います。
もし客側がそれがめんどくさい、手っ取り早く山に行きたいんだーって思うなら自己責任で単独登山をすればいいと思うし、ツアーに参加したからには旅行会社側は適切な服装や予測される危険を教えてあげたり、時にはメンバーにこういう理由だから途中で断念してもらいますよっていう苦言も呈するべき、だと思うのですが。売り上げの問題や顧客至上主義的なところで難しいのかな?(;ω;)

Aさん
コメント、ありがとうございます。
確かにその通りですね。「自己責任の意識が、客の側に低い」ということは、私も感じるところがあります。
Aさんのような方ばかりだったら、このような遭難は起こらないとも思います。
しかしながら、現状としては、旅行の延長で登山をされている方が多いのも確かです。
自分で計画できない、連れて行ってもらえる、交通手段が面倒だ、色々な理由があるにしろ、そこにはやはり、登山というものとは、少し違った他人任せの意識というものがあるのは確かです。
私のような、登山のノウハウを教えつつ、一般登山にもお客さんを連れて行く仕事・・が成り立っているというのは、日本ならではで、そこには自分で行けない方が多くおられるからに他ならないと思いますし、それを生業にしている私に取っては「なくてはならない存在」なのですが・・

海外では考えられず、海外・・特に、ヨーロッパアルプスなどのガイドはいかに、欠点を見つけだし、お客さんに「あなたでは無理です」と言って、諦めさせるのがポイントらしいのですが、日本では、いかに長所を見つけだし、「必ず登らせてあげますから」というのがポイントらしいです。ここに、日本と、いわゆるヨーロッパアルプスなどを中心とした山岳意識の違いがあります。色々話し出しますと、歴史などにも触れなければならないので、この辺にしておきますね。

問題は、現実をしっかり見ることです。
一つは、私達は日本人であるということ、もう一つは、そういう意識の方々でも登っていただくことができる、ということです。それ故に、私のようなガイドの仕事が成り立っているのですから。
何も知らない客は、登山をしてはいけない。といってしまうのは簡単です。しかし、そういうお客さんでも、きちんと一人でも登山ができるレベルにまでなっていただく、というのが私の仕事なんだと思っています。
私の持っている「やまや」では、Aさんのように、常に登山に対する意識の向上を心がけ、切磋琢磨して自分を鍛え、その壁をクリアした者に最大の喜びが待っている!ということを、常に唱えています。これは、山岳修行というものに通じることかもしれませんが、人間、努力すればするほど感動は大になるということだと思います。

私のような個人ガイドが、旅行会社と大きく違うのは、そういうことかもしれません。
私の知っている限り、旅行会社では、そういうことは、ほとんど何にも教えてくれません。
お客さんの方も、「そん面倒なことはどうでもいい、あなたは私達を連れていけばいいのだから」という、面倒臭がりの方が、旅行会社のそれに集まっておられているように思います。それ故になんにも知らなくても、歩けば、山に登れるのです。それなりの感動も得られます。しかし、いざ、遭難が起これば、そこで「自分はいままでどんな努力をしてきただろうか」ということに気付きます。時、既に遅いのです。

旅行会社のツアーに参加してもいいと思うのですが、そこには、Aさんが言われる様に、どんな時にも対応できるスキルを身に付けてから参加いただきたいものです。今現存し、登山ツアーを出しているたくさんの旅行会社は、その努力もせずに、何か起こったら客の自己責任にする、という「登山の自己責任」という傘で守られている、ということも客の立場で分かっていなければなりません。

トムラウシ遭難の時に気付かれた方はたくさんおられるでしょう。でも、そこから登山ツアーというものは減るばかりか、どんどんと増え続けている現状があります。それは、やはり「あ、遭難起こしても大丈夫なんだ」という旅行会社の甘えがあります。行政処分51日間なんてったって、アミューズトラベルでも東京本店のみで、他の支店は堂々と営業しているんですから・・何の痛手にもなりません。同時に前述の、面倒臭がりのお客さんが多いから、営業再開と共に、ツアーの客がどんどん集まってくるのでしょうね。

「トムラウシ遭難はなぜ起きたか」(山と渓谷社)というフリーライター羽根田治さんの著書の中で、これだけ大きな遭難を起こしていても、まだその旅行会社に申し込む人がいる・・驚いたのは、遭難者の中での生存者がまたアミューズのツアーに申し込んでいる。我々、岳人とは種類の違う人種の登山者・・「それでもツアー登山に参加するワケ」の項に、「実は、この遭難事故の取材を進めるに従って、うすうす感じ始めていたことがある・・・それはツアー会社やガイドに対して、ツアー登山の利用者が求めているものと、私がこうあるべきだと考えているものとの間に、どうも大きなギャップがあるらしい・・(中略)・・参加者がツアー登山に求めるものはリスクマネジメントの面ばかりでは無い。彼らはツアー登山をサービス業ととらえ、ガイドの人柄や接客の上手さを重視しながら、お金と引き替えに利便性・快適さ・安心感を求めようとする・・(中略)・・だが、いくらツアー登山がサービス業だとはいえ、自分たちの足で山に登る以上、山に潜んでいるリスクとは無縁ではいられない。確かに今回の事故のようなアクシデントに遭遇する確率は低いかもしれないが、それが、次回のツアー登山の時に起こらないという保証は無い。「ガイドを信頼しているから」というツアー登山利用者の声は、これまでにも取材をとおして幾度となく聴いてきたが、その信頼はなにに基づくものなのだろうか?優しい人柄?統率力?面倒見のよさ?気配り?体力?もちろんそうした要素もガイドには重要である。でも、いくら優しくても面倒見がよかろうと、危急時に的確な判断・行動ができないガイドを、あなたは本当に信頼できるのか?山のリスクに対するツアー会社やガイドの取り組みを厳しい目でチェックしていくことは、ツアー客が自分自身で行なえるリスクマネジメントの一つなのだ」とあります。また、羽根田さんの本を読んでおいてください。

今回の遭難も、トムラウシと同じく転落や滑落などではなく、避けようと思えば避けられた事故です。
ガイドのスキルが足りなかったのか、旅行会社が無謀だったのか・・それはわかりませんが、少なくとも、この先の登山ツアーに関して、影響を及ぼすことは間違いないと思われます。

山で皆さんの命を守るのは誰ですか?

もう一度、そのことをしっかり考え、この先の山行をより安全に行きたいものですね。

ガイドさん側やツアー会社の問題は山形さんの書かれてあることが大変参考になります。しかし、問題はガイドさんやツアー会社だけにとどまらないのではないかと以前から私は思っています。
私は単独で山に行くことが常でした。登山技術も誰から教えを受けたわけでもなく本などから独習したものです。ゆえに登山技術の未熟さをよく自覚するよう自身を戒め、危険な状態ではないかということについて意識を強くもつよう心掛けてきました。単独で行く場合は怪我から気候の急変まで全ての危険が自己責任の範囲のものであるということがはっきりとした形で見えるからです。しかし、ガイド登山というか登山ツアーに来られるお客さんは単独で山に行くことがない人が大半かと思われます。それゆえ登山技術の未熟さや気象の変化などからくる危険の回避をガイドさんやツアー会社に任せるということになりやすいはずです。単独行と異なり登山に伴う危険の責任をガイドさんやツアー会社に転嫁しやすく、簡単にいえば、登山に伴う危険が自己責任であるということが見えにくい山行形態だと思うのです。登山は自己責任で行うものです。単独行であれツアーであれ登山を行う以上はそこから生じる結果は全て自己責任のはずです。それについて客の側の意識が低いことが悲惨な結末を迎える大きな要因でないかと私は考えます。自分も含めてですが、ガイドさんの資質を云々するほどなレベルではないのが通常のお客だと思います。だからこそ、普段から登山に伴う危険は自己責任であることをよく自覚し、差し迫る危険を自分で判断しこれを回避できるような備えと心構えが必要であると思います。また、それができないようであれば山に行くべきではないと私は強く思います。

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